三百の
てるてる坊主を
ぶら下げて
菜の花
祭りを子らは待ちおり
父よりの
軍事郵便
よみかへす我に
父なき
七十三年
天水の
注ぎ込まれて
峡の
田は雲をあづかる
生け簀となりぬ
駅のホームに
パパーと
叫び跳び付く
児パパではないが
少しこそばゆし
里山へ
続く棚田を
とざしつつ
濃くまた薄く
霧流れゆく
定年も
賞罰もなく
田に畑に
励みて
米寿の未だ現役
就寝時
今日の一日に
手を合わす
重なる指の
ずれも直して
放蝶式
終えた八代の
児童たち
育てしギフチョウ
つぎつぎ放つ
橋に佇
つわれも瀬に
立つ釣りびとも
霧につつまれ
時空を越える
燃料の
切れて止まりし
草刈り機
補充してまで
残りは刈れぬ
一枚田
ソーラーパネルに
覆はれて
実り忘れし
土を掴みぬ
万葉の
森に蓮華の
開く音
ま夏まぶしき
光の中に
一升の
餅を背負ひて
よろめくも
小(ち)さきあんよは
にっぽんに立つ
病院ゆ
見下ろす稲田の
熟れ始む田ごと
田ごとに
色を違へて
ある時は
講演の言葉
とぎれつつ
師を語る
人の心を思ふ
汗にぬれ
せわしく働く
その人が
「おつかれさま」と
私に笑う
学ランで
応援合戦
するあいだ
あなたに
ずっと包まれてるよう
照りつける
日差しに
負けて髪を切る
のぞく首元
十六の夏
さかあがり
ぐるんとまわって
なつのそら
みあげてごらん
うれしくなるよ
目を覚まし
いつものように
布団上げ
学校行くのが
僕の日常
大雨の
ニュース
ひなんの準備をし
今日はやさしい
兄に寄りそう
テストの点
部屋で落ち込み
転がって
良しと声出し
机に向かう
竹の川
さらさらおよぐ
そうめんが
つかまるもんか
つるりとにげる
気がつくと
君を見上げる
背の丈に
少し前まで
逆だったのに