三百の
てるてる坊主を
ぶら下げて
菜の花祭りを子らは
待ちおりむ
工場長会長
社長部長平
喫煙室の
ぶら下げて
みんなほつこり
自転車も
怪我せぬうちに
廃車をと
ビール飲みつつ
子等の付け足し
生きおると
門扉を開けて
一日臥す
死なざれば
又出でて閉ざせり
時計屋の
隅で修理をする
店主気配の
消えて
歯車と化す
おいしいと
微笑む妻の
痩せた手に
男料理の
栗の実ごはん
院外へ
善哉たべに
脱け出さん
指切りをなす
甘党の男(ひと)と
まっすぐに
伸びゆく孫の
倒立の
影ながながと
夕映えのなか
蛍のやうに
息する母に
添ひ寝する
鳥も羊も
みんな眠れよ
五代めの
老爺が火花散らし
つつ守りし
鍛冶屋も
更地となれり
いきさつは
わからぬままに
細く小さく
跳ねてをります
トカゲの尻尾
使うたび
春の近づく
思いして
雪の切手も
あと一枚に
八日間
旅の土産は
チョコレートと
トランクからの
ラスベガスの香
けい子さん
あの天人菊
風を待ち
天女に会えると
今朝飛びました
米軍機の
飛び立つ音に
張り合いて
蝉が鳴く
朝三十度越す
元号の
三度変われる
世を生きて
卒寿の坂も
自力で登る
東京に
行きたいことを
告げたとき
さみしげな目で
父が見つめる
新しい
スパイクの
ひも大きめに
結んで君は
白線に立つ
しゅわしゅわと
あたまがもえそう
たんさんすい
へいきでのんでる
おとなはふしぎ
歓声を
深く吸いこみ
スタート台
全てを出しきれ
Take your marks
朝一に
キンキントマト
手に取れば
暑さ吹き飛び
今日が始まる
コンビニの
コーヒーマシンに
並ぶとき
少し疲れた
大人の真似する
容赦ない
水鉄砲の
的になり
三つの従妹の
弾ける笑顔
母さんは
家族のトップ
さからえない
猫は母さんの
となりにいるよ
履き慣れぬ
下駄を引きずり
彼の横
気付いてもらえぬ
心の痛み
自転車の
ペダルを踏んで
風を切る
風が走れば
落ち葉も走る
カブトムシ
黒光りする
その羽根を
ぼくも一度は
つけてみたいな
lifeという
スペルの中に
ifがある
「もしも」があるか
私の人生
平均台
こわくて足が
うごかない
ガンバと
仲間の声が聞こえる
土壇場で
試合を決める
一撃を
放ち輝く
僕の右足