山口県歌人協会

-やまぐち2019短歌大会入賞作品-

一般の部入賞作品

山口県知事賞

萩原 克則(柳井)

三百の
 てるてる坊主を
 ぶら下げて
菜の花祭りを子らは
 待ちおりむ

山口県教育委員会
教育長賞

久保田麗二(山口)

工場長会長
 社長部長平
 喫煙室の
ぶら下げて
 みんなほつこり 

山口県議会議長賞

山代屋貞子(岩国)

自転車も
 怪我せぬうちに
 廃車をと
ビール飲みつつ
 子等の付け足し 

周防大島町町長賞

藤井沙千子(岩国)

生きおると
門扉を開けて
一日臥す
死なざれば
 又出でて閉ざせり

周防大島町
教育委員会教育長賞

松本  進 (光)

時計屋の
 隅で修理をする
 店主気配の
消えて
 歯車と化す   

周防大島町
議会議長賞

谷岡計甫(山陽小野田)

おいしいと
 微笑む妻の
  痩せた手に
男料理の
 栗の実ごはん  

周防大島町
文化振興会会長賞

笠松美佐子(岩国)

院外へ
 善哉たべに
 脱け出さん
指切りをなす
甘党の男(ひと)と

日本歌人クラブ
会長賞

西元 静香 (萩)

まっすぐに
 伸びゆく孫の
 倒立の
影ながながと
 夕映えのなか  

山口県歌人協会
会長賞

南本みどり(防府)

蛍のやうに
 息する母に
添ひ寝する
 鳥も羊も
 みんな眠れよ  

山口県歌人協会
会長賞

伊藤 美子(阿武)

五代めの
 老爺が火花散らし
 つつ守りし
鍛冶屋も
 更地となれり

長澤ちづ特選

河野 康子(宇部)

いきさつは
 わからぬままに
 細く小さく
跳ねてをります
 トカゲの尻尾  

長澤ちづ特選

松田 容典(和歌山)

使うたび
 春の近づく
 思いして
雪の切手も
 あと一枚に   

選者特選
中岡 文子(岩国)

八日間
 旅の土産は
 チョコレートと
トランクからの
 ラスベガスの香 

選者特選
柴田 裕子(岩国)

けい子さん
 あの天人菊 
 風を待ち
天女に会えると
 今朝飛びました 

選者特選
佐川紀美江(岩国)

米軍機の
 飛び立つ音に
 張り合いて
蝉が鳴く
 朝三十度越す  

選者特選
松原八重子(柳井)

元号の
 三度変われる
 世を生きて
卒寿の坂も
 自力で登る   

児童生徒の部入賞作品

山口県知事賞
山口県立小野田高等学校
三年 吉村 真唯

東京に
 行きたいことを
 告げたとき
さみしげな目で
 父が見つめる  

山口県議会議長賞
周防大島町立大島中学校
三年 奥 さゆり

新しい
 スパイクの
 ひも大きめに
結んで君は
 白線に立つ   

山口県教育委員会
教育長賞

防府市立華城小学校
一年 鈴木 里彩

しゅわしゅわと
 あたまがもえそう
 たんさんすい
へいきでのんでる
 おとなはふしぎ

日本歌人クラブ
会長賞

周南市立桜木小学校
六年 淺田 羽恭 

歓声を
 深く吸いこみ
スタート台
全てを出しきれ
Take your marks

山口市長賞
山口県立山口中央高等学校
二年 伊藤 成美

朝一に
 キンキントマト
 手に取れば
暑さ吹き飛び
 今日が始まる  

山口市議会議長賞

山口市立白石中学校
二年 水田 早紀

コンビニの
 コーヒーマシンに
 並ぶとき
少し疲れた
 大人の真似する

山口市教育委員会
教育長賞

周南市立桜田中学校
二年 山内貫大郎

容赦ない
 水鉄砲の
 的になり
三つの従妹の
 弾ける笑顔   

山口文化協会会長賞

山口市立さくら小学校 六年 栗田常利

母さんは
 家族のトップ
 さからえない
猫は母さんの
 となりにいるよ 

山口県歌人協会会長賞
山口県立小野田高等学校
三年 大田 陽葵

履き慣れぬ
 下駄を引きずり
 彼の横
気付いてもらえぬ
 心の痛み    

讀賣新聞西部本社賞

山口県立小野田高等学校三年  國本 優理 

自転車の
 ペダルを踏んで
 風を切る
風が走れば
  落ち葉も走る 

朝日新聞社賞
下関市立一の宮
小学校
五年 向尾 悠里 

カブトムシ
 黒光りする
 その羽根を
ぼくも一度は
 つけてみたいな 

毎日新聞社賞
光市立光井
中学校
三年 葛原 歩実

lifeという
 スペルの中に
 ifがある
「もしも」があるか
  私の人生

山口新聞社賞
山口県立山口中央高等学校
二年 古谷 陽弥

平均台
 こわくて足が
うごかない
ガンバと
 仲間の声が聞こえる

中国新聞社防長
本社賞

岩国市立玖珂中学校
二年 村塚  怜

土壇場で
 試合を決める
 一撃を
放ち輝く
  僕の右足