山口県歌人協会

やまぐち2021短歌大会入賞作品

一般の部入賞作品

山口県知事賞

金丸 洋子

一生(ひとよ)かけ
 あなたが読んだ 
  本の壁に
守らるるごと
  病みつつ眠る 

山口県議会議長賞

山根 直子

小雪ふる
 白梅町で
  纏ってた
ダッフルコートと 
 泣きたい気分 

山口県教育委員会
教育長賞

柴田 裕子

あのと言い
 次の言葉を
  さがす子よ
季節はずれの
  雨の音する  

日本歌人
クラブ賞

磯部 伸美

携帯で
 ワクチン予約
  せんとして
打てど打てども
  テープの流る 

山口県歌人協会
会長賞

松本 進

冬の暮れに
 舞い降りてきた 
  夕焼けは
ひとつひとつの
  家に灯ともす

山口県歌人協会
会長賞

百田 昌子

観戦の
 適わぬ五輪の
  卓球の
テレビに手打つ
  「よし石川」と

山口県歌人協会
会長賞

西元 静香

土耕し
 四〇キロの
  肥料播き
崩るる如く
  腰をおろしぬ   

山本寛嗣特選

市岡 恵子

太陽と
 少しの涼風
   連れてくる
 捥ぎたてトマト
   午前五時半   

藤本喜久惠特選

吉村 京子

耳当てれば
 まだ樹でありし
  欄干が
森に聞きいし
  風の音する    

入選

原田 俊一

あなじ吹く
 見島航路の
 水先を飛魚(あご)の
あまたが
 青く案内  

入選

二宮 信子

香のたかき
 大葉摘みきて
  見上げれば
手のひらほどの
   夕焼けのこる  

入選

椎木 清子

合格の
 嬉しさ
 隠しきれない
かわれにも
  タッチ心地よき音 

入選
藤本 征子

新しき
 コーヒーショップの
  窓に映る樹木の
若葉とマスクの
 白と 

入選
兼子 春枝

在り馴れて
 軋む床さえ
  親しかり
古き家居にもく
 さるすべり咲く  

入選
谷岡 計甫

角島の
 万葉歌碑を
  訪ね見る
海をながめて
 和海藻をさがす  

入選
井倉 道代

盆の宵
 雨ふり止まぬ
  墓原に
幻影かとも
 白鷺わたる    

入選
吉崎 郁子

ただひとり
 手酌で飲みおり
  蟋蟀が
ここにいますよ
 ころころころころ 

入選
貞久 京子

けんめいに
 背を追いかけた
  日の遠く
今は夫を
 待ちつつ歩む   

入選
竹重恵美子

眠る間に
 働く臓器 
  ほとばしる
朝のいばりは
   元気の証      

入選
近藤 順子

糸こぶを
 つくらんとして
  唇にもちゆく
指のマスク
   にあたる      

入選
山田 陽子

すくと立つ
 稲穂に咲ける
  白き花
細き雄蕊の
 風にふるえる      

入選
松崎 悦子

逆上がりに
 靴底みせて
  蹴りあがる
一瞬(せつな)重力(おもさ)に
   勝利す少年