山口県歌人協会

2024年短歌大会入賞作品

第18回山口県芸術文化祭
第60回山口県歌人協会短歌大会
第25回日本歌人クラブ中国ブロック短歌大会IN山口
やまぐち2024短歌大会受賞者

山口県知事賞

鳥取県 上田 正枝

今日までの
 罪は許すと言うが
  ごと百日紅の
花揺れ
  止まぬ朝    

山口県教育委員会
教育長賞

岩国市 近藤 順子

ねこ車に
 コンテナ載せてく
  曽孫のせ
朝露ひかる
  みかん畑へ   

山口県議会議長賞

岡山県 藤井 正子

面会の度に
 寒いと
  言ふ母よ
今年の猛暑を 
 一日も知らず   

日本歌人
クラブ会長賞

周南市 森元 輝彦

パレットの
 青溶きゆくに   
  溶け切れぬ
父征き逝きし
  深き海

山口県歌人
クラブ中国ブロック賞

広島県 野口 恵子

潦に
 エンジェルラダー
  映りたる
三八月の空こそ
 静かなるもの   

山口市長賞

山口市 俵田ミツル

亡き母の
 アルバムに
   あり笑みふふむ
特攻兵の
  小さき一枚  

山口県歌人協会
会長賞

岩国市 井川 栄子

対向の
 運転手さんも
   笑ってる
おそらくラジオの
    同じ漫才  

長尾
選者賞

岡山県 園部 恵子

相聞の
音声(おんじょう)
 すずしくふる雨は
 ふたつ水輪を
   つと寄り添わす

石橋
選者賞

光市 松本  進

故郷という
 ジグソーパズルに
  時は経ち
吾というピースの
  場所はもうない 

井上
選者賞

周防大島町 田原美代子

田んぼには
 余すことなく
苗植わり
 満ち足るという
  風景である   

入選
岩国市 田中千佳子

急速に
 この世の中が
  変わっていく
ついていけないが
  困ってもいない

入選
鳥取県 中村 麗子

「汁にでも」
 百足藻葉を  
  差し出して
ほほゑむ男の
 あかがねの照り 

入選
柳井市 吉崎 郁子

わが腕を
 たった一針
  刺しただけ
叩かれし蚊の
 むくろのひとつ 

入選
岩国市 向井 桂子

古びたるく
 電話ボックスに
  灯が点り
「利用できます」と
  貼り紙ありぬ 

入選
岡山県 藤井 正子

この地球
 誰のものぞも
  虫の音の
 聞こえてきたり
  八月の真夜  

入選
島根県 日高 政恵

再発の
 癌に
  天命知りし甥 
治療も断ちて
 残る日を生く

入選
鳥取県 本閒 温子

官舎にて
マタニティドレスが
  廻ってたかの年
Aさん
 次はBさん   

入選
岩国市 藤本 征子

せめてもと
 介護ベッドは
  庭向きに
 ひと月ぶりに
   夫退院す  

入選
島根県 安部 歌子

雨あとの
 路地に夏草
  におい立ち
 ひと時私は
  あの日の少女 

入選
岩国市 畑口 博子

ひきだしを
 覗いてごらんと 
  囁ける星と
 三日月
  わが窓にありく

入選
防府市 世良 弘美

亡き夫の
 言伝て一つ
  携へて
とんぼがすいと
 われに寄りくる 

入選
島根県 宮里 勝子

スーパーの
 食品売場に
  米の消ゆ
豊葦原の
 瑞穂の国の   

入選
鳥取県 平尾 潤子

海風を
 ひらりと
  躱し舞う蝶の
翅色深しく
摩文仁野(まぶにの)の秋

入選
岩国市 金光紀代子

朝風に
 露おく庭の
  芝踏めば
たまゆらこぼす 
 ミクロの光      

入選
周南市 佐久田静枝

日溜りに
 転た寝すれば
  掛けくれる
母の匂いの
 ダウンのコート    

入選
岩国市 正木 洋子

ひとり居の
 気ままな
  生活今日もまた
七月の雨
 降りやまぬなか    

入選
広島県 石原 豊子

突然に
 病告げ
  こ来し歌の
友とき経ちしかば
 か離れ果つるなり   

入選
萩 市 澤井 潤子

朱をおびる
 雲が植田の
  水に映え
鷺一羽立つ
 夏至の日の暮れ    

入選
岩国市 田中千佳子

急速に
 この世の中が
  変わっていく
ついていけないが
 困ってもいない 

入選
鳥取県 中村 麗子

「汁にでも」
 百足藻葉を  
  差し出して
ほほゑむ男の
 あかがねの照り 

入選
柳井市 吉崎 郁子

わが腕を
 たった一針
  刺しただけ
叩かれし蚊の
 むくろのひとつ 

入選
岩国市 向井 桂子

古びたるく
 電話ボックスに
  灯が点り
「利用できます」と
  貼り紙ありぬ 

入選
岡山県 藤井 正子

この地球
 誰のものぞも
  虫の音の
 聞こえてきたり
  八月の真夜  

入選
島根県 日高 政恵

再発の
 癌に
  天命知りし甥 
 治療も断ちて
  残る日を生く

入選
岩国市 藤伊 花子

今はなき
 友も一緒にく
  写りいる
キスゲ花咲く
 尾瀬の木道   

入選
岩国市 梶山 秀彦

屋上は
 風の軌道ぞ
  車椅子
 置いてさあ飛べ
   あの月目指し

入選
岩国市 山代屋貞子

三十八度の
 暑さを知らぬ
  亡き夫の墓石を
 洗う地下水
  汲みて   

入選
広島県 岩本 幸久

靴ひもを
 結びなおして 
  歩きだす
 萩往還の
  維新の道を  

入選
防府市 中村 正規

海を見る
 浜辺の墓に
  母を置く
父のとなりの
 少し奥へと   

入選
岩国市 金光 秋子

じいちゃんに
 逢いに来たよと
  孫娘
遺影の前に
 東京バナナ   

入選
鳥取県 山本憲二郎

顔見ずも
 言葉によりて
  恋をして
ロマンス詐欺に
 かかる寂しさ  

入選
岩国市 樋口 節子

墓地の場所
 決めるは早いと
  云いたるに
 今日は拾いぬ
  夫の遺骨を  

入選
光市 松本  進

車間距離が
 我とは違う間隔で
  運転するより
 疲れる
  助手席   

入選
島根県 安部 歌子

心まで
 私をのぞく 
  青空に
帽子を深く
 かぶって歩く  

入選
島根県 村上 勝史

桑の実は
 母を待つ味
桑の葉は  
 蚕食む音
 遠き日のこと  

入選
光市 相本 絢子

そら豆と
 蕗が
アップルパイとなり
戻りてきたり
 春のできごと

入選
周南市 兼平 敦子

「菜の花は
 春の色だよ」
 と幼持つ 
 黄のクレヨンは 
   短くなりぬ

入選
岡山県 金森 悦子

いづくにて
 長引くならむ
  盆経の
 僧の予定の
  五時は過ぎつつ

入選
周南市 岩政 道子

呼びとめて
 大根二本
  抱かす友
 夕映えの道
  ほこほこ歩く