日直の
最後の見回り
誰もいない廊下で
ちょっと
スキップをする
退院の
夫の背骨の
ゴツゴツに
しゃぼんの泡を
盛り上げ洗う
投げ出さず
怯まず
怯まず
乾きたる畑百坪の
雑草毟る
新札へ
混じる諭吉のく
万札よ
指紋だらけの
諭吉になりて
線香に
火の点きにくい
梅雨さなか
トイレの紙は
重くしなやか
丈をつめ
身幅を広げ
三十年前の
刺繍の
ブラウスを着る
わが通う
フラ教室より
僅かなる
距離にタトゥーの
看板のあり
太陽光パネルの
隙も
なんのその
この世染めゆく
秋のきりん草
大腸の
患部はここか
蛙啼く
入院前夜
手を置き眠る
決断の
夫に従い
春野越え
老人施設に
姑置きてきぬ
棉の花は
さんでまわす
からくり機
きゅっきゅっと
音たて棉の実落とす
立つだけで
歓声あげる
人類を
ガラス越しに見る
レッサーパンダ
オリオンの
星座のような
手術痕鏡を
見れば
下腹にあり
川の辺に
あの世この世と
仕切るごと
今朝湧き出でて
咲く曼珠沙華
柳井川に
金魚提灯の
赤と白
街の主役の
顔して揺れる
足首が
右手の指でも
つかみきれ
細くなりたり
病みてひと月
軽トラに
若布あふるる
バケツ乗せ
盆地に春を
甥の持ちくる
さざ波の
場に立てる
太公望
竿しなはせて
海を引き寄す
きのうより
少し澄みたる
音のして
夫が開けゆく
サッシ六枚
児ら唄う
夜市四季小唄の
踊りの輪
ふくらみながら
元気にまわる