山口歌人協会

第43回防府市民短歌大会受賞作品

第43回防府市民短歌大会受賞者・作品「一般の部」(平成26年10月5日)

市長賞      本心はどこに隠そう かき混ぜるコーヒーカップの底が見えたり原田 妙子
市議会議長賞   はなやぐと言ふにはあらずひとり住む厨に赤いスリッパを置く 粟本 房子
教育長賞     はつなりを待たせる雌花今朝一つ西瓜の姿持つてあらはる   津田 和代
文化協会会長賞  封筒の筆圧強き母の文字「青。赤。しぼり」朝顔の種     末永 敦子
天満宮梅花賞   春嵐乱れて今朝の地蔵尊帽子は阿弥陀(あみだ)に前垂れは背に 河野美津子
観光協会会長賞  手さぐりにやっとはずせしネックレス箱に納めて良き日暮れたり重田 二枝
商工会議所会頭賞 三つ四つ泰山木の白き花一陣の風に夏雲のわく        河野 豊子
青年会議所理事長賞墨染めの衣を羽織り音たててバイクで走る若き坊さま     加藤 林子
大会特別賞 
沖つ辺にたぎる潮騒聞ゆるや妹はしづかに眼を閉ぢにけり萩原 克則
もしも朝、透明人間になりゐても点滴はしておかうと思ふ倉橋 杏佳
短歌会会長賞    
キッチンは小さき銀河もぎたての梅のうぶげの輝く朝(あした)     佐々木晴美
卒寿すぎ坂径喘ぐ寺詣励ます老鶯声清かにて             吉松トミ子
佳作賞    
四歳がタンタンタンタン誕生日ババおめでとうと歌って踊る      吉武 信子
あと幾度父の日祝ふ日のあらむ百歳(ひゃく)まで生きるつもりと言へど 重田登美子
五十円のはがきに二円切手貼り少し重たい友への便り         松原 良子
過ぎし日は夢のごとくよ九十三年静かに迎ふる今日誕生日        津田 和代
背を丸め草取りてゐし母なるや新しきもんぺ二枚もありぬ       木原 純子
頭からかぶりつけとう仲居さん鮎の串焼き熱きを持ちて        重田 二枝
光る竹訪ね求めて満月の夜の虹架かる袂に参る            脇屋 信子
張りのある声聞く電話三十分友の病は影潜めおり           末永 敦子
酷寒の満洲シベリア堪えて来て卒寿も過ぎてもうそろそろだ      山本 緑 
鉛筆の匂い懐かし友と居て老もひらめくパズルに挑戦         河野 豊子
少しづつ親しきものとなる夕べ木の芽を摘めば山頭火顕つ       河野 豊子
鳴きながらただまつしぐらに泳ぎゆく夫(つま)を見つけし浅瀬の雌鴨  河野 豊子

第43回防府市民短歌大会受賞者・作品「児童生徒の部」(平成26年10月5日)

教育長賞 もう一度あの瞬間に戻りたいきみはできぬか夏の日ざしよ  金石 昌子(防府高校)  
文化協会会長賞赤トンボ夕陽に染まり秋の空炎のごとく燃えあがる町    岡藤 義典(誠英高校)  
天満宮梅花賞 母の日に伝えたい気持ちあふれだす素直な気持ち伝えてみよう天本 巴菜(高川学園中学)
短歌会会長賞    
海のいろ瑠璃いろ群青君のいろ大きな麦わら雷雲のよに     石松 里彩(防府商工高校)
今もまだ忘れられないあの感動「生まれたよ」という母からのメール松本 美紀(防府西高校) 
ユニフォーム球児の涙と汗すって高校野球最後の夏へ      藤田 美咲(防府西高校) 
しとしとと降り続く雨なぜだろうあなたといるとキラキラしてる 秋本 百葉(防府高校)  
フェンス越し夕焼け染まる君眺め近くて遠いもどかしい距離   岡山 舞花(誠英高校)  
砂浜によせては引いてく白波に青き風の音(ね)通り去りゆく   原田 由美(誠英高校)  
縁側でうちわ片手に夕涼み鈴を鳴らして猫たわむれる      島本絵理子(誠英高校)  
佳作賞 
グランドの端で咲いてるタンポポが風に吹かれて白くとんでく  上村 泰平(防府商工高校)
部活動日も暮れかけて帰り道真っ赤に染まった佐波川を見る   花城 剣士(高川学園中学)
色鉛筆みんなそれぞれちがう色人の心もカラフルで良い     中村 渓希(高川学園中学)
秋が来て日が落ちるのが早くなる静かな夜に鈴虫が鳴く     伊藤 美月(防府西高校) 
放課後に仲良しグループあつまって日が暮れるまでガールズトーク宮崎 桃子(防府西高校) 
最近は小さな幸せ見逃して良いことないかと嘆いてる      小嶋 梓紗(防府西高校) 
幸せになってと声をかけるけど隣にいたいこのままずっと    池永 百花(防府高校)  
西日浴び一緒に歩いた夏の道大小並んだあの影法師       本保 春菜(誠英高校)  
夜遅く空を見るときれいだな部活後に見る空の世界       前原 健人(高川学園中学)
日やけ止め今さらながらぬってみるくっきり残るくつしたのあと 川﨑 智咲(防府高校)